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渡辺前財務官 インタビュー要旨
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<坂本氏>
渡辺顧問が財務官ご在任中の2004年7月からの3年間は、日本経済がバランスよく成長し、為替も非常に安定した時期でした。一方、通貨外交の面で考えますと、以前はG5で検討されていたワールドワイドな問題が、グローバル化が進む中でG7、G8、そして新興国も含めたG20での議論へと拡大するなど、非常に複雑化してきているように感じます。また、経済規模の拡大に伴い、アメリカの対新興国あるいは対中東諸国のインバランスが凄まじく拡大しました。世界のインバランス問題は市場の大きな不安要因ではないかと思うのですが、この問題をどのようにお考えでしょうか。 |
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<渡辺氏>
2004年からの3年間で、国際的不均衡の議論がやや深刻化していたのは実は前半で、後半は、やや沈静化していた感がありました。すなわち、前半は、米国の「貿易赤字」、「財政赤字」という2つの赤字が、絶対額でもGDP比でも膨らみ続け、「赤字は、どこまで拡大するのだろうか」と各国が懸念していた時期でした。しかし、後半には、米国の財政収支が好転し始め、貿易赤字の拡大幅にも、ある程度減速感が出てきました。 |
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つまり、後半は、米国の「貿易赤字」あるいは「経常収支赤字」に過度に偏り過ぎていた感のある議論に、修正、ないし認識の見直しがなされた時期であったと思います。現在も不均衡は存在していますが、2003、2004年当時に比べてその深刻の度合いはかなり違ってきていますし、G7での議論では、ある程度落ち着きを見せ始めています。すぐに危機的な事態に陥る、という状況からは少し縁遠くなっているような感じがします。 |
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また、おっしゃるようにG7にロシアが加わってG8、新興国も加わってG20と、議論をするパートナーも増えてきていますが、基本的には、「同じような経済体制・政治的な決定メカニズムを持ち、また、共通するマーケットを持つG7の中でなるべく問題を解決していこう」という考えが今も強いと思います。ただ、実際にはG7だけでは解決できない問題もあり、その時にG7以外の国とどう協調していくかということは、常に我々G7の問題意識としてあります。米国経済と世界経済の動きがシンクロして同じ方向に動くという実態は、あまり変わっていません。しかし、世界の経済成長に対する日・米・欧、いわゆる「三大先進地域」の占める割合が徐々低下してきていることは間違いないのです。98、99年当時、世界経済が100成長したとすると、三大先進地域がその成長の9割程度を担っていました。しかし、2005、2006年頃になると、新興国・途上国が世界の経済成長の7割程度を担い、三大先進地域のウェイトが3割程度まで落ちました。つまり、世界経済の方向性をナビゲイトする役割と、実際のエンジンとしての役割が少しずつ乖離してきているわけですが、ナビゲーターとエンジンをどうやって一緒に動かすか、ということが在任当時の課題であったわけであり、また、これからも暫く続く課題ではないかと思います。 |
<坂本氏>
「経済のグローバル化」の現象として如実に現れてきたのが、「ユーロの外貨準備通貨化」だと思います。アメリカ一極支配ともいうべきかつての米ドル基軸通貨時代から、ドルとユーロの二大基軸通貨の時代に入りつつあり、ユーロへのシフトの動きが、足許で加速しています。こうした変化について、ご在任中どのようにお感じになられましたでしょうか。 |
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<渡辺氏>
99年にユーロが誕生しましたが、2000年の9月に1ユーロ=0.8ドルを割りました。この時、歴史上最後の協調介入を実施してユーロを救ったのですが、その後、ユーロは自立的に信頼性を回復し、より広く、そしてより多く流通するようになりました。「2大通貨」と呼ぶのはまだ早いかもしれませんが、近い将来、2大通貨体制になることは間違いないと思います。 |
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そうなると、「ドルとその他の通貨」という比較だけではなく、「ドルとユーロ」、「ユーロとその他の通貨」という見方も加えて多元的に考えていく必要があります。円についても、対ドルのみではなく対ユーロでの動きもあわせて議論していかなければなりません。米国に対して何を言い、ヨーロッパに対して何を言うのか、これらを同時並行的に行うという意味では、通貨外交のターゲットも複線化してきているのではないでしょうか。 |
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<坂本氏>
国際政治の場において、アングロサクソンモデルと言いますか、押し付け的な民主主義がその限界を露呈しつつあるのではという懸念がありますが、そういう状況のなか、グローバル経済の加速に伴い、ある日突然ドルからユーロへの極端なシフトが起きてしまうのでは、という潜在リスクを常に感じています。国際政治と通貨という観点から、このようなリスクをどうご覧になられますでしょうか。 |
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<渡辺氏>
政治的に、通貨の使用が急激に変わるということはそう簡単には起こらないでしょう。ユーロへシフトしている現象の一例として、いくつかの産油国が原油の代金決済の一部を徐々にユーロ建てに振替えていることなどが挙げられます。中東の産油国が、自国の消費パターン_ヨーロッパ製品を購入するウェイトが増えている_に合わせてある程度通貨を選んでいくということは考えられます。また、「ひとつのバスケットに全部のたまごを入れるのは賢明ではない」という昔からの格言もありますが、やや過剰に累積したドルを徐々に他の通貨へ変えていく際、広く流通しているユーロにある程度傾斜するという可能性はあるのでしょう。但し、中東諸国などは、これまでに積み上げてきたドルがあるわけですから、自分達の首を絞めかねないドルの急激な減価は求めないはずです。やはり、こうした動きは、漸進的に起こるのではないかと思います。政治面での軋轢の問題が非常に昂じるようなことがない限り、ある日突然、すべての産油国がドルを使うのを止める、ロシアが敵対的にルーブル建てやユーロ建てに移行する、というような懸念は、まだあまりないのではないかと思います。もちろん、マーケットの参加者がそのようなリスクを認識しているということは、非常に良いことだと思います。 |
<坂本氏>
中国人民元の改革ペースにつきまして、米国だけでなくユーロ圏からも批判が出はじめました。今後の人民元改革ペースについてどのようにお考えでしょうか。 |
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<渡辺氏>
今後も、グラジュアルな改革以外の選択肢は採りにくいと思いますが、最近ヨーロッパが中国に対する批判を強めている背景は、恐らく二つあると思います。一点目は、元々中国の貿易黒字拡大は対アメリカが中心でしたが、最近では、ヨーロッパとの関係でも中国の黒字が大きくなってきているということです。そして、対全世界では収支トントンだったものが、今やそれも大きな黒字になっている。そういう中で、中国に対する欧州からの批判は、米国に遅れた形で、少し小さい規模で出てきているのだと思います。 |
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二点目は、最近のユーロの相場状況です。人民元対ユーロのレートは、当然ユーロドルの相場次第で決まりますが、これまでの人民元の切り上げはあくまで対ドルで行われており、最近のユーロがドルに対してやや高くなっていることから、人民元の実質的な対ユーロレートは実はあまり改善していない、あるいは「改悪」している状況なのだと思います。 |
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そのような状況のなかで、中国にとって、今後は何が要因となるかを考えますと、まず、工業製品の競争力だけ見れば、例えば、年率で対ドルで、あるいは対ユーロでも、5%なり7%などと人民元を切り上げることも、やってやれないことではないと思います。しかし、一方で、「農業問題」は、より深刻です。中国の全人口13億人の内、農業人口は、扶養家族も含めて8億人程度と、非常に大きなウェイトを占めています。一方、中国の土地は実はかなりの部分が山や砂漠で、一戸当り耕地面積は日本と同程度かそれ以下と、国際競争力は非常に低い状況です。こうした中、人民元が高くなると輸入農産物価が安くなりますので、中国の農村に非常に大きな影響を与えることになります。就業人口の全産業に占める割合が高い産業ですので、政権としても、農業に対する配慮なしには議論はできないでしょう。農業構造改善や効率性の向上なども含めた、総合的な政策を採ることにより生産性の向上、ひいては国際競争力の維持が、今後の中国の課題だと思います。また、そうした総合政策を中国にどうやって取り入れてもらうかという点が我々の課題だと思います。この農業問題がある限り、先に述べましたように、今までどおりの漸進的な改革を選ぶしかないと思います。 |
<坂本氏>
ご在任中の3年間、日本経済は順調な回復基調が続きました。しかし、順調な時ほど潜在リスクが在るもので、サブプライム問題は、そのリスクが顕在化した典型ではないかと思うのですが。 |
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<渡辺氏>
サブプライム問題では、「金利が低い中でも、とにかく高いリターンを求める」という思考が強すぎた結果が、典型的に現れていると思います。ファンドマネージャーやプレイヤーは基本的にこうした思考を持っています。我々のように、昔、日本国債で8.7%の金利が付くような高金利時代を経験した人間は、今の低金利の状態を異常だと考えがちです。 |
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異常な状況の中でも、とにかく高いリターンを上げようとして、いろいろ無理をして新種の商品、良く言えばハイブリッドですが、悪く言えば良く分からない商品に手を出している面があると思います。一度、「もう少し低い水準のリターンが、あるべき姿だ」という前提で将来の収支勘定をしてみても良いのではないかと思います。このように考えてみれば、もう少し堅実な投資判断に戻るでしょう。すなわち、一番典型的なスタイルである「自分で財務諸表をみて株を買う」、あるいは「債権の貸し手が誰で、借り手が誰だという点をしっかり踏まえて投資の判断をする」ということでしょうか。 |
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また、従来は、セクターごと、金融市場ごとに異なる値動きをする商品を組み合わせることによってマーケット変動のインパクトを抑えていました。しかし、流動性が非常に高まり、相互にお金が染み出してくると、異なる商品であっても、値動きがシンクロナイズすることがあります。振幅を抑えるためにAとBとCを組み合わせたものの、実際にはAとBとCが同じ方向に動いてしまい、想定以上に振幅が大きくなるというようなことが起こりやすくなっているのだと思います。こうした点を踏まえ、自己の判断で様々な形でヘッジをする必要がある、ということを認識していただくことが大切なのだと思います。 |
<坂本氏>
最後に、渡辺財務官在任中のこの3年間、凄まじい勢いで個人マネーが外国為替市場に参入してきましたが、率直なご印象と、市場参加者へのウォーニングを含めてご感想等をお願いいたします。 |
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 | <渡辺氏>
保証金取引という狭い範囲ではなく、外国為替取引を通じた国外資産も含んだ資産運用を日本の個人が行うということは良いことだと思います。預貯金へのバイアスが非常に強かった状態から、それ以外の商品にも注目していくということは今後もあるべきだと思いますし、その点について特段問題があるとは思っていません。但し、保証金取引の場合には、どうしても元の資金と実際に動かしている資金の差額があり、常に「増幅された」リスクが存在します。 |
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リスクを増幅することによってリターンを上げている世界ですから、「持っているお金が全部無くなったらそれで終わる」では済まなくなるようなこともあると、取引をされる前にきちんと認識していただきたい。その上で、金利差なども考慮しながら、外国為替を使った債券投資やファンドなどを活用していただく。そして、保証金取引については、まずは、「大きく動く」という前提で考えていただければと思います。 |
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| 様々な商品がどこでも提供されるグローバルなマーケットの中で、品揃えを増やし、その中で組み合わせをすることは必要だと思います。もちろん、「いつも儲かる」と思うのは間違いですね。市場は上がったり下がったりしますから、「なるべく色々な商品を組み合わせて、全体の利回りを多少上げていく」ことが賢明な投資活動ではないかと思います。 |
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