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商品と為替の関係〜資源国通貨とは〜

1、商品相場活況の背景

2007年は、商品相場、とりわけ原油や金価格の上昇が顕著となり、歴史的な高水準となりました。為替との関係が注目されてこなかった商品相場が、そのドラスティックな変動から為替の変動要因として無視できなくなり、さらに、円キャリートレードの拡大とともに「資源国通貨」にも注目が集まるようになりました。

商品が注目された背景にはこれまで金融・証券市場にだぶついていた莫大な投機資金が商品市場に流れたことがありますが、そのきっかけになったのは国際金融市場への不信感でした。サブプライム問題を契機に金融・信用市場への懸念の連鎖が生じ、金融市場から資金が引き上げられるとともに、行き場を失った投資マネーが商品市場に流れていったのです。その結果、原油や金の価格は、需給要因だけでなく投機的な要因も加わって、未曾有のレベルに上昇し、NY原油は100ドル近くまで、NY金も900ドル近くに達しました。 商品相場の上昇を受けて、商品と関連性の深い「資源国通貨」への注目度も高まりました。これは円キャリー取引に代表される、低金利を売って高金利の通貨を買う動きが活発化する中で、高金利としての資源国通貨が注目されるようになったからです。資源国通貨の代表格には豪(オーストラリア)ドル、NZ(ニュージーランド)ドル、加(カナダ)ドル、南ア(南アフリカ)ランドなどがあります。オーストラリア、ニュージーランド、カナダそして南アフリカはいずれも第一次産品国であり、通貨のみならずその国の経済自体が、商品価格の変動の影響を大きく受けます。資源国通貨の台頭とともに、為替相場を見る上で、商品相場の動向が無視できなくなりました。

2、原油、金価格はどのように決定されるか?

 商品の中で、為替との関連から特に注目されるのが原油と金です。そして、就中NY原油とNY金は、世界的な指標として重視されています。世界最大の取引所であるNYの商品取引所で取引されるこの二つは、価格の公正面で信頼性に富むことから注目されています。NY原油はNY商業取引所(NYMEX)、NY金はNYMEXの一部門となるNY商品取引所(COMEX)で取引され、そこで決まる価格はいずれも先物相場です。

 先物相場は、将来の決まった期日に受け渡しを約束した取引(先物取引)によって決まります。
商品の相場は、一般に気候要因や政治的な要因など不確実な外部要因で大きく変動しますが、先物取引とは、その変動を回避(ヘッジ)するために利用される取引です。例えば原油の輸入業者が80ドルで仕入れる場合、仕入れ後の価格が70ドルに下落してしまった場合は10ドルの損失が発生してしまいます。その損失をカバーするために先物相場で同量の原油を売り、10ドル下落した場面で買い戻す(このことによって10ドルの利益が発生する為、先ほどの損失と相殺されます)ということを行っています。

 NY原油もNY金も、受け渡し期日によって限月(げんげつ)というものがあり、例えば、12月に受け渡しをする原油は、「12月限(じゅうにがつぎり)」という限月に該当します。原油も金も、その限月ごとに取引が行われ、価格が決定されますが、通常、商品相場を見る上では、「中心限月」とよばれる、直近の最も取引の多い限月の価格を使用します。

3、原油の変動要因と相場水準

 原油価格の上昇が新聞紙面上やニュースでも度々話題になっていますが、これは、原油価格の上昇が、身の回りの生活に直接・間接に与える影響が大きいからです。これについては、経済講座の『原油価格高騰とその影響とは?』を参照してください。

原油はイラン・イラクを始め中東情勢の混乱を機に上昇が顕著となりました。外為市場では、中東の混乱やテロの懸念が「地政学的リスク」として意識されますが、中東諸国の多くは、戦争の勃発や無差別テロの発生など治安が不安定であり、それらの事件が金融市場の混乱もしくは停止を引き起こすことがしばしば懸念されます。2001年9月11日に発生した米国同時テロではNYのツインタワーがテロ攻撃によって倒壊され、金融市場の機能が麻痺したことは記憶に新しいところですが、この事件を機に、外為市場は、中東情勢により敏感になったきらいがあります。

近年はまた、地球温暖化などによる異常気象により北半球が歴史的な寒波に襲われたり、中国など人口大国での原油需要が拡大し需給逼迫要因になったり、中東情勢の混乱やテロ懸念、さらに中東の産油諸国が資源ナショナリズムを再び強めていたりするなど、原油の需給を巡り、状況が混沌としています。今回の原油の急騰も、複合的な要因が絡み合ってできた産物と考えられます。

それに拍車をかけたのが、サブプライム問題でした。サブプライム損失が世界的な株安を引き起こし、それを嫌気した巨額のマネーが株式市場から引き上げられ、商品市場に流れ込むという状況が、相場を一押ししたからです。さらに、これまで欧米中心だったファンド資金に、中国・中東・ロシアなどの資金が加わり、この結果、NY原油は、100ドル近くまで上昇しました。

世界最大の埋蔵量・生産量を誇るサウジアラビアのほかに、産油国には中東諸国を中心にOPEC(石油輸出国機構)を形成するUAE(アラブ首長国連邦)、イラク、イラン、クウェート、カタール、インドネシア、ベネズエラ、アンゴラ、アルジェリア、ナイジェリア、リビアなどがあります。また、カナダやオーストラリアも産油国であり、最近は、原油価格の上昇が、これらの通貨の上昇をもたらしています。

原油に関する指標

  • 週間在庫統計
    米エネルギー情報局(EIA)が発表する。原油・ガソリン・留出油の別で毎週水曜日に公表される。通常、原油在庫の変動が重要であるが、ガソリン在庫の変動も相場要因になる。もっとも基本的な指標。
  • 国際エネルギー機関(IEA)月報
    国際エネルギー機関が月1回公表。とりわけ世界原油需要見通しが重要となる。
  • OPEC総会
    定例総会と臨時総会がある。原油生産枠を日量バレルで発表。相場への影響が大きい。
 

出典:Future Source com

4、金の変動要因と相場水準

金は宝飾用や工業原料としての需要も大きいのですが、商品市場ではドルのヘッジとして買われる傾向が強い商品です。すなわちドルが嫌気されドル売り地合いとなるときに金が買われます。その意味で、金は、ドルと相互に「代替する」商品といえます。また、ドルが売られるときには、ドルに次ぐ流通量を持つユーロも代替的に買われる傾向があり、そういう意味ではユーロと金は、補完的であるいは相関性があるといえます。ドルが嫌気される事情も様様ありますが、近年では、テロ懸念や中東情勢の地政学的リスク、そしてサブプライムローン問題に端を発する金融市場の混乱・世界的な株安が代表的であり、そのような状況においては、投資資金の逃避先として金が選好されます。また、中国を始めアジア諸国での需要が根強いのも特徴です。

今年の後半、主要通貨に対するドル売りが進行するとともに、金が急ピッチで上昇しました。ドルとの代替性という観点から、ユーロと金に相関が認められることは先に述べましたが、2007年、特に後半は、NY金が歴史的な高値水準に上昇するとともに、ユーロ/ドルも史上最高値1.4965ドルをつけるなど急ピッチで上昇したことからも、裏付けられるのではないでしょうか。

2007年の金は歴史的な水準となり、900ドルを目指した展開となりました。ロシアや中国が外貨準備のドル比率を下げると表明したり、中東でドルペッグ制を解消することを検討したり、いわゆるドル離れが話題になりましたが、このドル離れが代替資産としての金への保有の誘因になったようです。

出典:Future Source com

5、資源国通貨の台頭

商品価格の上昇を背景に、2007年は、資源国通貨が大いに注目されました。資源国通貨とは、豪ドル、NZドル、加ドル、南アランドなど、一次産品への依存度が強く、商品価格の上下が経済状況に直ちに反映する国々の通貨です。また、資源国通貨の通貨価値も商品相場にある程度連動しており、とりわけ今年は、商品相場の急激な上昇が資源国内でのインフレ圧力となり、金利引上げ観測を高めて通貨価値を押し上げる、という現象が顕著に見られました。

加えて、資源国通貨の台頭の大きな要因には、円キャリートレードの拡大があります。すなわち、低金利の円を売って高金利の通貨で運用するという取引ですが、資源国通貨はいずれも高金利通貨であることから、円を売って資源国通貨の高利回りを狙った買いが多く見られました。資源国の金利は、2007年12月現在、オーストラリア6.75%、ニュージーランド8.25%、カナダ4.25%、そして南ア共和国は11.0%といずれも日本(0.50%)や米国(4.25%)に比べて高金利の傾向にあり、これらの通貨は、対ドルでも強含みで推移してきました。

6、資源国通貨の種類と変動要因

資源国通貨の中で代表的なものは豪ドル、NZドル、加ドル、そして南アランドです。

  • 豪ドル
    2007年は107.85円まで上昇しました。金、原油両方の産出国であるため、金・原油価格の上昇は豪ドル円の上昇に結びつきます。ただし、一般には金利政策や経済指標(GDP、物価指数)などの強弱で変動することのほうが多いといえます。
  • NZドル
    2007年は97.77円まで上昇しました。厳密には資源国ではないため、直接的に原油や金の価格に連動することはありませんが、豪ドルに連動した動きを伴うことが多いことから、NZドルは、資源国通貨に含まれています。先進国一の高金利のゆえに買われることが多いのが特徴です。
  • 加ドル円
    2007年はドル/加ドルのパリティ割れが話題になりましたが、ドル/加ドルは底を打って反発しました。加ドル円は、125.60円まで上昇しました。カナダは産油国であり、従って、加ドルは、原油価格の上昇に敏感に反応します。また、金利政策や経済指標によってもよく動きますが、経済的に関係の深い米国のファンダメンタルズの良好さを受けて買いが強まることもあります。
  • 南アランド
    流動性には乏しい通貨ですが、その高金利(政策金利11.0%)ゆえに注目されています。世界的な金の産出国のため、金価格の変動に大きく左右されます。

7、商品相場の対円相場への影響は?

最後に教科書的な話になりますが、一般に商品相場が上昇した場合の、ドル円やクロス円の反応は、プラス、マイナス両方向の動きが考えられます。
商品価格の上昇は、当然物価を押し上げる作用があり、利上げ観測を高めます。利上げ観測が高まれば、相対的に高金利の通貨が買われることから、上述した高金利通貨・ 資源国通貨の買いを引き起こします。

しかしながら、利上げ観測は、一方で企業の資金調達の障害になることから、株価にはマイナス要因になります。現状では、株価が上昇すると、リスク許容度の高まりから円売りが強まることが多いのですが、株価が下落すれば、逆にリスク回避志向を背景に、円買いが進んで、ドル円やクロス円を引き下げるケースもあります。さらに商品価格上昇、とりわけ原油価格は行き過ぎれば、企業収益や家計を圧迫することから景気減速懸念を惹起、結果として各国通貨の価値を下げる方向に作用します。
従って、商品価格の上昇が為替に与える影響はプラスマイナス双方が想定され、どちらの影響が大きいかは、その時々の状況により異なるといえます。

  • パターン1:商品価格上昇→インフレ懸念→利上げ観測→ドル(ユーロ、ポンド)買い
    市場が金利相場すなわち政策金利の変更や、利上げ・利下げ観測に敏感に反応する状況下であれば、このような反応になるでしょう。
  • パターン2:商品価格上昇→インフレ懸念→利上げ観測→株価下落→ドル(ユーロ、ポンド)売り
    市場が株価の動向に敏感になっている場合は、商品価格の上昇が間接的に売り材料になると考えられます。
  • パターン3:商品価格上昇→物価の上昇→企業・家計を圧迫→ドル(ユーロ、ポンド)売り
    景気の先行き見通しが市場のメインテーマになっている場合は商品とりわけ原油の上昇は景気に水を差すと考えられますので、売り材料になると考えられます。

 

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