1. HOME
  2. 各種サービス
  3. PRIME図書館
  4. 連載 やさしい経済講座
  5. スタグフレーション(stagflation)

各種サービス

スタグフレーション(stagflation)

1、スタグフレーションとは

 スタグフレーションとは、不況(スタグネーション_stagnation)の中でインフレーション(インフレ_inflation)が進行する状況をひとつの言葉にした造語です。

 不況下で物価が持続的に下落するデフレ(デフレーション_deflation)に対し、景気が好況期にある中、物価が持続的に上昇することをインフレと言います。かつて、インフレは供給に対して需要が超過することによって物価が押し上げられるために発生する、と説明されてきましたが、1970年代の石油ショックを契機に、不況下でも持続的なインフレがみられるケースが発生し、それまで有効とされていたインフレ時の金融政策(利上げ、公開市場操作の売りオペ、あるいはそして預金準備率引き上げなどによる金融引き締め策)に限界があることがわかりました。

2、インフレーションとスタグネーション

(a) インフレーション〜原油高がもたらした経済状況

 1970年代同様、今回もインフレ懸念を強めているのは、歴史的な原油高です。需給逼迫や「地政学的リスク」を背景に原油価格の上昇が止まらず、NY原油先物相場は、2008年初頭に遂に1バレル=100ドルを突破して史上最高値を更新しましたが、この原油の暴騰は、他の商品価格にも波及しました。

 すなわち、原油高が代替燃料としてトウモロコシの需要の増加をもたらしたため、他の農産物の生産量が激減し、穀物価格を押し上げる結果となり、さらに、飼料用の穀物の上昇が家畜の生産に影響を与えたことから、肉やソーセージの価格も上昇しました。

 そして、原油・ガソリンの上昇による輸送コストの上昇が、商品価格全般の上昇を招くという形でインフレ懸念を強めているのです。

(b) スタグネーション〜サブプライム問題発生がもたらした景気後退への懸念

 2007年以降、米国の景気後退の発端となったのは「サブプライムローン関連損失」問題であり、住宅ローンの不払いや遅延が拡大したことにより住宅ローン市場、そして米国の住宅市場全体が不振に陥ったことから始まります。米住宅建設・販売ともに未曾有の落ち込みを示し、個人消費の中である程度の割合を持つ住宅関連の消費の減退や、消費者向けのローン残高の急減も消費全般の足を引っ張り、米国GDPの伸び率低下をもたらしたほか、米国株の長期的な低迷の端緒ともなりました。

 景況感を表す指標では、ISM指数の50割れやフィラデルフィア指数の大幅な落ち込みなどが、景気後退の前兆を示唆するものとしてクローズアップされています。

3、高まるスタグフレーションへの懸念とFRBの金融政策

 上記のように、現在の米国はインフレ懸念と景気後退懸念が同時に高まりを見せており、米国経済のスタグフレーション入りが現実のものとなるのではないかと懸念されています。

 但し、現在の米FRBのスタンスは、インフレリスクの上振れはないとして金融引き締めには動かず、むしろ、景気重視の金融政策を行うことでこの状況を打開することができると考えています。バーナンキ・FRB議長の考えでは、デフレは、インフレよりも余程解決の難しい問題との意識があり、インフレ期待が高まらないうちに何とか景気後退を防ぐ、つまり、デフレ的な状況に陥らないよう全力を尽くすということが、今回の政策の要だと思われます。(現実問題として、住宅価格の急落により家具、家財道具等の価格も下落傾向にあり、一次産品価格の高騰のみが全体のインフレ率を高める訳ではないと、FRBは考えているようです。)

4、通貨別の動向

市場では、スタグフレーションのリスクが意識される中、リスク回避の円買い、逃避資産としての金買い、地政学的リスクを背景とした原油買いなどが顕著になり、商品相場は、軒並み堅調に推移しています。その結果、資源国通貨は堅調、円は株によって上下、そして、ドルは、米経済指標に一喜一憂するというパターンになりました。

  1. 米ドル、ポンド、そして加ドルについては、米、英、カナダでスタグフレーションが意識され、また、利下げ観測も強まったことから、相対的に下落傾向が見られます。
  2. ユーロについては、ユーロ圏の物価上昇は警戒される一方で、景気後退懸念が他経済領域ほどに強まっていないため、スタグフレーションへの警戒感は薄く、ドル売りならびにポンド売りの逃避先となっており、また、連動性の強い金価格がインフレヘッジ先として一段と上昇したこともあり、総じて堅調に推移しました。
  3. 豪ドルとNZドルは、豪州・ニュージーランド両国でインフレは警戒されるものの、景気減速感は生じていないことから、スタグフレーション懸念は生じず、特に豪州では、むしろ景気過熱感から利上げ観測が継続しています。商品相場の上昇とも相俟って、比較的堅調な推移となりました。
  4. 円は、最近はリスク回避の円買いで上昇していますが、依然世界最低の金利水準を維持している為ため、結局相対的に「弱い通貨」の地位から完全には脱却していません。

 

本資料は信頼できると思われる情報・データに基づいて作成しておりますが、その正確性、完全性を保証するものではありません。また、本資料は情報提供のみを目的としたものであり、売買の勧誘を目的としたものではありません。売買に関する最終決定は、お客様ご自身の判断でなさいますようお願いいたします。万一、お客様がこれらの内容を参考に行った取引から損失・損害が生じた場合にも、当社、ならびに情報提供元を含むすべての関連会社は、これに係る一切の責任を負いませんので予めご了承ください。なお、その目的を問わず本資料を無断で引用または複製することを禁じます。
このページの上へ